2014年6月20日 星期五

日本に多大な利益をもたらす製品、それはスマホです!

Standard

日本に多大な利益をもたらす製品、それはスマホです!


日本に多大な利益をもたらす製品、それはスマホです!
知っておきたい「U字曲線」
ウリケ・シェーデ 米UCサンディエゴ校教授 日本型経済・経営および経営戦略論の権威。主な研究領域は、日本を 対象とした企業戦略、組織論、金融市場、政府との関係、企業再編、起業論など。
 ウリケ・シェーデ
2014年5月26日(月)

ひょっ としたら信じがたい読者もいるかもしれませんが、日本発・世界のヒット商品の1つはスマホです。スマホといえば、米アップルのiPhoneや サムソンのGalaxyなどが代表的ですが、実はどのスマホにも、さらにはiPadやタブレットにもこの「事実」があてはまります。
確かに iPhoneは米国でデザインされ、大部分の利益を米アップルが手に入れます。 その間、日本企業は音楽のデジタル化やiPodの波を逃しただけではなく、“ガラパゴス”ケータイを作ってしまったということで、ソニーなどの日本企業は 大変な批判を受け続けました。しかしそれでも、スマホは多くの日本企業にとって大きな収入源となっているのです。どうしてでしょうか。

(出典: WSJ 12/16/2010 / アジア開発銀行研究所)
iPhoneが日本にもたらす莫大な利益
(出典: WSJ 12/16/2010 / アジア開発銀行研究所)iPhone製造における国別内訳


iPhone の製造プロセスを詳しく見てみると、日本企業が大活躍している理由が分かります。右の図は、iPhone 3Gの製造にかかわる企業の、国別の内訳をまとめたものです。この図は、電子機器のマーケットリサーチを専門とするアイサプライがiPhoneを分解し、 それぞれの部品の原価価値を調査して作りました。これを見ると、iPhoneの製造原価のうち、実に34%の価値を日本企業が付加していることが分かりま す。iPhone 3Gの製造原価が1台約178.96ドルですので、iPhone1台が売れる度に、日本に60.84ドル落ちる計算になります。
アッ プルは素材や部品を提供している企業のリストを発表しています(例えばこの資料か ら確認できます)。このリストには、AGC旭硝子、京セラ、TDK、住友電気工業など、90以上もの日本企業が記載されています。中には、第一精工、アル プス電気、イビデン、ミツミ電機、日本メクトロン、SMKなど普段あまり耳にしない企業も含まれています。これらの企業もまた、アップルに直接部品を売っ ているのです。

日本の素材なしにスマホは成り立たない
日本の iPhoneへの付加価値は部品によるものだけではありません。先ほどの企業リストにあるように、多くの企業は台湾か韓国の企業です。実 は、この2つの国は対日貿易赤字の状態です。この理由の多くは、日本の化学品、素材、部品、産業機械、電気製品の輸入によるものです。
つま り、日本の企業が素材や部品を生産し、台湾や韓国の電子部品メーカーがこれを加工し、最後に中国の企業が組み立てをしているのです。その結 果、中国もまた、台湾と韓国に対して貿易収支が赤字となっています。例えば、LCDに使う高品位で薄いフィルムを日本の企業が生産しています。この中に は、JSR、日東電工、富士フィルムホールディングスに加えて、ほとんどの人が耳にしたことのないような企業がいくつもあります。この他にも、台湾や韓国 は、LCDの画面を作るための機械や半導体なども日本から輸入しています。
これから分かるように、すでに加工し終わった最終製品だけを見 て、日本企業のiPhoneに対する付加価値が少ないと判断するのは間違いなのです。 日本の企業は、川上に位置する素材や、構成部品などを生産しています。これらの素材を作るのはとても高度な技術が必要であるため、iPhoneへの付加価 値はとても高いのです。
その結果、日本のiPhoneの原価に対する貢献度は、世界のどの国よりも高くなるのです。サムソンの GalaxyやHTCのスマホにおいても、 日本企業による付加価値はiPhoneと同様、もしくはそれ以上に高いかもしれません。つまり、韓国と台湾がスマホの生産のために日本の素材を輸入してい るため、日本企業が生産するスマホが世界で競争できていなくても、日本は素材の市場で世界一なのです。

日 本がLCDの画面を作るための素材、部品、産業機械において世界一なのは、嬉しい事実です。なぜなら、製造工程の中で一番利益率が高いのは大抵 川上の、素材や部品を扱う産業だからです。製造工程と利益率の関係を考え出したのは、台湾のパソコンメーカー、エイサーの創業者であるスタン・シー氏でし た。数年前に彼は、パソコンの部品を組み立てる単純作業だけでは利益を上げられないことに気づき、利益率と製造工程の関係は、以下のようなU字曲線で表せ ると発表しました。この曲線は笑っている人の口に似ているため、英語では”スマイリー・カーブ”と呼ばれます。


利益率のスマイリー・カーブ


この曲線から分かるように、製造工程の中で川上と、リテールを担当する川下にいる産業において、最も経常利益率が高くなっています。さて、アップルが儲かる理由が見えてきたでしょうか?
アップルは、川上のデザイン、そして川下のリテールだけが自社で、それ以外の工程を外部委託しているのです。このような戦略で高利益を得られる企業は、残念ながら今現在は日本の電機メーカーにはほとんどありません。

アップルの秘密主義で有名になれない日本企業
しかし多くの日本企業は、川上におけるデザインのすぐ次の工程に位置しています。さらには、最先端のスマホにおいて、ディスプレイ素材を生産する企業がデザイン工程にかかわることが少なくありません。

これにより素材を生産する企業は、主要供給業者という立場を確立できます。アップルはとても秘密主義の企業であり、知的財産保護のためデザイン工程を内密に進めます。そのため、デザイン工程やそれに関わる川上の企業の名前は公開されていません。
川上の中でも、素材や産業機械を生産する工程の利益率が高い理由は、高度な技術を必要とするからです。複雑な有機化学物質を取り扱うことが度々あるため、他の企業では同じ品質でデザイン・生産できないような素材を作っているのです。
この素材は高品質のディスプレイには不可欠なものです。アップルやサムソンはこの高品質なディスプレイを使って、商品の品質を高めようとしているため、お金を多く払ってでもこの素材を購入したいと思うのです。
分 かりやすい例は偏光フィルムです。これは、化学物質を吸収させた薄いフィルムで、画面を明るくしたり、日光の下でも見られるようにしたり、視野 角(ディスプレイを横から見ても画面が綺麗に見える角度)を広げたりします。この偏光フィルムにおいては、世界市場の約70%を日本の企業が占めていま す。もちろん、韓国のLG化学やドイツのヘンケルなど競合先はいます。彼らは日本にとって脅威ですが、幸いにも日本企業は立ち止まらず日々品質向上の努力 を続けているため、世界トップの座を維持できるのです。

どうしてこれが意外なのか
iPhoneと、日本のグローバル・サプライチェーンにおける役割に関する研究発表をするたび、多くの日本人の方に驚かれるだけではなく、信じてもらえないこともあります。これには2つ、大きな理由があると思います。
まず、素材や部品のメーカーの存在を知らないことが理由です。多くの人にとって、アップル、ソニー、パナソニック、サムソンなどのブランドは馴染み深いでしょう。これはテレビやパソコンなどにブランド名が必ず明記されており、毎日目にするからです。
こ れに対し、パソコンのハードディスク・ドライブや、液晶ディスプレイを作ったメーカーの名前を目にすることは滅多にありません。ましてや、その 液晶ディスプレイに使われる素材を作ったメーカーともなれば、更に難しいでしょう。そういう意味では、日本の企業の付加価値を実感しにくいのは仕方がない のかもしれません。

利益率より経営規模を優先する日本人
しかし筆者の 話を信じてもらえない最大の理由は、多くの日本人が”オールド・ジャパン”的な考え方を持ったままであるからだ、と思います。これに ついては、次のコラムで詳しく話そうと思うのですが、簡単にいうと、多くの日本人には、大企業に憧れる傾向が昔からあるからです。それはつまり、利益率よ り経営規模を優先する、ということです。

日本の大企業の多くは多角化、つまり、様々な種類の商品やサービスを提供しています。例えば、日立製作所はつい最近まで800以上の子会社を持っており、発電所からドライヤーや掃除機まで、電気に関わるすべてのものを生産していました。
掃 除機など、家庭で毎日使われる商品も生産していたため、誰もが日立の名前を知っています。その半面、素材や部品を生産している企業は知名度が低 く、比較的小さな企業である場合も多いため、日本人にとって、こうした企業が世界で活躍していると信じることは難しいのでしょう。
過去20 年間で世界の経済は劇的に変わりました。先ほどのU字曲線からわかるように、部品を組み立てるだけの分野では利益率はとても低くなってい ます。1970~80年代の日本企業の競争優位は、消費者向けの高品質な商品の大量生産、つまり組み立てとデザインにありました。
そこに、韓国、台湾、そして中国が追いついてきました。日本の企業は、U字曲線の中で”組み立て”にあたる分野から移動しなければ、利益を上げられなくなってしまったのです。

U字曲線上の「川上」に移動せよ
パ ナソニックやソニーは最近、消費者向け商品のビジネスを打ち切ると発表しました。ソニーはVAIOを、パナソニックは携帯電話を、もう生産しな いというのです。この発表を聞いた多くの人々はこれを、“失敗”、“敗北”、“損失”、などと捉えます。しかし、これは経営戦略の観点からすると、とても 賢い一手です。
日本は部品の組み立てなどの単純作業を低コストでできるという優位性を失ったため、この分野で 利益を得ることが難しくなりました。国際競争に勝って成功するためには、U字曲線上の違う点に移動しなければいけません。
製 造企業にとって、大抵これは川上に移動することを意味します。つまり、高い技術を要する付加価値の高い素材や部品を生産することにより、利益率 を上げるのです。パナソニックが最近、アップルに部品を提供する企業に加わったことは、”勝者”への一歩を踏み出した、ということではないでしょうか。
嬉しいことに、多くの日本企業が、同じような変革を始めています。これについては、また次のコラムでご紹介致します。


著者プロフィール
ウリケ・シェーデ
米UCサンディエゴ校教授 日本型経済・経営および経営戦略論の権威。主な研究領域は、日本を 対象とした企業戦略、組織論、金融市場、政府との関係、企業再編、起業論など。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140508/264160/?P=1


0 意見:

張貼留言